[ 銀色カフェの非日常 ]
「おっはよ〜ございますっ!」
元気にカフェのドアを開ける。時間にして午前十時。
いつもの時間より早い。さらに、もう一点、いつもと違うところがある。
「・・・・・・どうした?今日は土曜日だぞ」
オフィス街の路地裏だ。午前中から来る客はあまりいない。
朝早くならば別だが、この時間は実質カフェは休憩時間になっていた。
「・・・・・・だって、今日はぁ」
「ん?」
の眉間の皺を見て、知盛が首を傾げた。
「・・・・・・休日出勤なの」
たっぷりの間を取って、知盛が時計を見る。
「へえ?お嬢さんは重役様だったようだな?」
「・・・嫌味だよぅ、知盛さんは。重役だったら平日も休日も会社じゃなくて遊んでる」
ぶすくれた表情で、カウンターに座る。
「・・・クッ、で?時間はあるのか?」
「ない!でも、何かすぐにあるなら一気飲みするっ!」
軽く眉を上げると、知盛がグラスに氷を入れてグレープフルーツジュースを注いで出した。
「まあ・・・可哀想なお嬢さんにサービスだ」
「可哀想は余計ですっ!ところで・・・将臣くんは?将臣くんでストレス解消しようと思って来たのにぃ」
またも得意の眉を上げる仕種をする知盛。こうして彼は言葉を誤魔化すのが上手い。
最初に店に来た時から、何となくだが知盛と将臣の関係に気づいた。
ここで気づかないで、きゃーきゃー騒ぐと大変だ。
知盛に無視されまくる。将臣に騒ごうものなら速攻だ。
気まずさから二度と店のドアを開ける事は無くなる若い女性客たち。
煩いオヤジも追い出される。客を選ぶ店なのだ。
(気づかない方が変なのよねぇ・・・・・・)
は、適度な距離を保ちつつ、静かに仕事をしていた。
先に声をかけてきたのは将臣。バケットサンドの失敗を詫びる為に。
そのうちに将臣に顔を覚えられ、言葉を交わすようになると、知盛にも声をかけられるようになった。
いつの間にか一番の常連客かもしれない。
「わかった!寝てるんでしょ〜。もぉ!つまんな〜い!!!」
は物凄い音を立てて飲み物を一気に啜る。
「・・・いい勘してるな。そろそろ来るさ」
知盛の家は近所らしい。
昨晩は知盛に可愛がられて起きられないだろう将臣を想像すると不憫だが、休日出勤のも十分不憫である。
「いいや!ちょっと先に休憩〜。将臣くんで遊んでから仕事に行く〜」
コーヒーの準備をしていた知盛が振り向く。
「・・・程々にしてやってくれよ?」
「知盛さんが程々にしてあげれば、私も将臣くんで心置きなく遊べるのに〜」
両肘をカウンターについて、手に顔を乗せた姿勢のが意味ありげに笑う。
「・・・クッ、あれは俺のだ」
サイホンに湯を入れ始める知盛。
「知ってますよ〜だ。ただ、ちょっぴりお借りしてるだけですぅ〜。基本的には二人の観察が趣味ですから」
そのままカウンターに突っ伏した。
「・・・変わってるよな、は。最初から気づいていた様だし」
コーヒーの香りが充満して来た。どうやら、遅れてくる将臣のためにコーヒーを淹れている気配。
ついでににもおこぼれがありそうだ。
が顔を上げて、肺に空気を満たしてコーヒーの香りを楽しむ。
「ふぅ〜〜〜、いい香りぃ。・・・・・・気づかない方が変なんですよ。私なんて、ニブイ方ですよ?」
「どうだかな?」
将臣が来るまでは、そのまま会話も無く静かな時間を過ごした。
話しても、話さなくてもいいのが居心地がいいと感じていた時───
「遅れた、わりぃ!つか、起こせ!!!・・・・・・あれ?が何でいるんだ?」
勢いよく扉を開けて登場の将臣に、知盛とが笑い出した。
「将臣くん、寝坊のペナルティーを科します!」
びしっ!とに指を指されて、将臣が呆けた顔になる。
「・・・・・・ペナルティー?何だ、それ」
普段着のまま、の隣に腰を下ろす将臣。
知盛は黙ってカップに出来立てのコーヒーを注ぎいれていた。
「そこにぃ、袋があるでしょ?あれは私が持ってきました。そして、素敵なお姉さんは休日出勤です」
「自分で素敵って言うかよ・・・・・・」
知盛に出されたコーヒーを先にの前に置く将臣。
自然にそう動けるトコロが将臣の美点だ。
も気づいてはいるが、まずは自分の目的達成が先。
「いいでしょ。可哀想だよね?そう思うでしょ〜?思わないわけ無いんだ、これが!」
将臣の性格を把握しているは、畳み掛けるように話を進める。
「実家から林檎を送ってきたの。一人暮らしだっちゅーの!アップルパイ作って。そうでもしなきゃ、消費できない」
「はぁ?!」
コーヒーを飲んでいた将臣の口がカップから離れる。
カウンターの向こうでは、予想通りの展開に知盛が笑っていた。
が入ってきた時から、大量の林檎が入った袋が気になっていたのだ。
「えっとね、三時には仕事終わると思うの。たくさんあるから失敗してもいいよ。剥くべし!それでおやつにしようね」
「失敗って・・・・・・あの数をか?!俺が一人で?いくつ作らせるつもりだよ」
恐らく、段ボール箱にして一箱分と思われる。
よくもここまで持ってきたなと、そちらに感心してしまう将臣。
将臣の返事を無視して、はカウンター内にいる知盛へ頭を下げる。
「いただきます」
「・・・クッ、どうぞ」
は、コーヒーをのんびりと飲みだした。最早、任務達成後の休息といった感じだ。
「おい、!どうみてもこの数は無理だろ?」
将臣が袋を指差しながらへ詰め寄る。
「うん、そうだね。別に全部今日使わなくたっていいじゃん。林檎のデザートなら、何でもいいよ?」
「・・・将臣。頂いたんだ、奥へ運べ。それと、。これからは、こういう時はコイツを使え。手、痛かっただろ」
どちらかといえば姉御肌のは、普段この様な言葉をかけられることがない。
茹蛸にも負けないくらいに紅くなった。
「・・・知盛さん、反則。・・・・・・だけど、次に何か送ってきたら将臣くんお借りします」
ぺこりと頭を下げる。
「そこ!俺の意思を無視するなっ。まあ、こんなにたくさん大変だったとは思うけどよ。って、青森の人?」
袋を持ってカウンターの内側へ入りつつ、会話の仲間にも入る将臣。
「違うよ。うちの親が変わってるの。放っておくと私が餓死しちゃうと思ってるみたいで。たまに変なのがくる」
奥へ運び終えた将臣が、知盛の隣に立つと、
「変なのって、どういうのだよ?」
が肩を竦める。
「米袋とか。味噌の樽とか。梅干の瓶とか。量もはんぱナイんだよね。林檎はマシな方だけど、賞味期限が短いから困る」
最後の一口を飲み終えたが立ち上がる。
「ご馳走様でした!えっと・・・コーヒーいくらですか?」
バッグから財布を出しながら顔を上げて知盛を見る。
「・・・クッ、コーヒーは将臣のついでだ。林檎も頂いたし、午後に将臣の新作デザート食べに来い」
「らっきぃー!張り切って仕事してきま〜す♪」
財布をバッグへしまうと、腕時計を見ながらが駆け出して行った。
「・・・・・・俺の新作って何だよ?」
が消えたドアを見つめたままの将臣。
「・・・クッ、お前が作るんだろ?お嬢さんの仰せだ。リンゴのデザートをいくつか考えるか」
知盛がレシピ集を本棚から取り出して、パラパラと捲りはじめる。
知盛とて、何でも作った事があるわけではない。
これだけの数の林檎だ。ひたすらアップルパイも芸が無い。
どうせなら、将臣に色々と練習をさせつつ、も喜ぶ一挙両得狙いをと頭をフル回転させる。
「知盛〜、俺は何をしてればいい?」
己の包丁使いの実力を知っている将臣は、本を眺めている知盛の指示が待てない。
「・・・クッ、先ずは寝癖を直して着替えをしてエプロンつけて来い」
知盛に言われて己の姿を見る将臣。
「・・・寝癖は一番最初に言え!」
舌打ちしてそのまま着替えが出来る部屋へと駆けて行った。
「・・・だから玩具にされるんだ。寝癖なら、俺より先にが言うだろ?」
知盛が将臣に見せたかったモノは、昨晩項につけた所有印。
将臣の髪は長いので人の目に触れるものではないが、将臣に自覚させるには威力十分だ。
寝癖など最初から無く、鏡の前に立たせるのが目的なだけだった。
「知盛って、性格悪ぃよな・・・・・・」
着替えが済んだ将臣が店へ戻っての第一声だ。
「・・・ま、それは取り方次第。・・・・・・これにするから練習しろ。最低でも10個は剥くんだな」
いつの間に本へメモを挟んだのか、いくつか紙が見える本の表紙を軽く叩いてみせる知盛。
「・・・アップルパイだけじゃねぇの?何だよ、その紙」
将臣が本を指差した。
「言われたものを作るだけなら誰でも出来るよな?それとも、自信がない?」
将臣が林檎の皮むき以外に出来る事があるとも思えないが、負けず嫌いの将臣だ。
挑発すると、まんまと乗ってきた。
「・・・っ!やってやろうじゃん。がすっげー驚くモノ並べて出してやるっ!」
「じゃ、それ剥け」
林檎を指差すと、将臣が対抗意識を顔に出し、包丁を握り締めて林檎を手に取った。
知盛は静かにエプロンを外すと店のドアを開け、営業中の札を裏返しにする。
「将臣。足りない材料を買ってくるから。精々頑張るんだな?」
「くっそーーー!知盛が帰るまでに剥き終わってやる」
林檎に囲まれて格闘する将臣を置いて、知盛は町へ買出しに出かけた。
足りなかったのはレモンだけなので、知盛がドアを開けると、まだ林檎を剥き終わらないでいる将臣。
「・・・・・・せめて二個は剥き終わっていて欲しかったが」
「うるせぇ!」
必至に林檎に向き合う姿は可愛いが、剥いた皮を持てば相当の重さ。
(・・・・・・アップルティー追加だな)
これだけ重い皮ならば、煮出せば風味の良い紅茶が淹れられるだろう。
それにしても、将臣のペースを待っていては到底お菓子は作り終わらない。
黙って林檎を五個取ると、手早く剥く。三個は冷蔵庫へ入れられた。
その後、黙々とパイ生地とケーキ生地を作り始める。二個の林檎で甘煮を作りながらの平行作業だ。
将臣が林檎を七個剥き終わる頃には、パイ生地の素は冷蔵庫へ、ケーキ生地も甘煮をのせて焼かれていた。
「将臣、もう剥かなくていい。林檎、四個出せ。お前は冷蔵庫の林檎をすり卸せ」
言われるままに将臣が林檎を手渡すと、知盛は素早く林檎をくし形に切る。
「・・・・・・何作るんだよ」
文句を言いながらも、鍋の隣に立ち林檎を卸し始める将臣。
「リンゴのシャーベット」
知盛はオーブンに入れたケーキの生地を見ている。鍋ではカスタード作りと、またも一人で動いている。
「へぇぇぇ。これが?なるのか〜〜〜?」
半信半疑のようだが、シャーベットになるのかと思えば手に力が入る。
大人しくせっせと林檎をすり卸していた。
その間に知盛はパイ生地を仕上げて、カスタードを流し込みリンゴを並べる。
「後はこれも焼くだけだ」
オーブンの下段へパイを入れた知盛が一服しようとすると、将臣が声を上げる。
「待て!俺が剥いたのがまだ三個残ってるだろうが!無視かよ」
ようやく作業を終えた将臣が、知盛へ三個の林檎を差し出す。
「ああ・・・それは焼きリンゴの予定。時間はまだある。シャーベットの方が固まらないだろ?」
ひとまず三個は冷蔵庫へ収められた。
「・・・そっか。・・・・・・林檎の数、合わねぇ」
指折り数え始める将臣。将臣が剥いたのは七個。知盛のが五個。
「・・・クッ。・・・・・・皮見ろよ・・・・・・お前が剥いた林檎は小さすぎだ。まだまだ練習が必要そうだな?」
「くそぉぉぉ!明日も練習だ!」
ドタバタしながらも、楽しいお菓子作りの時間を過ごしていた。
「こんにちは・・・・・・本日休業になっちゃってますケドぉ・・・・・・・・・・・・」
約束の三時には少し遅れて、がカフェへやって来た。
得意げな表情で将臣がを迎え入れる。
「よっ!今日は知盛が可哀想なの為に貸切だとさ。・・・デザートもたくさんご用意いたしました」
ワザとらしく丁寧にの手を取ると、カウンターに一番近いテーブル席へ案内する将臣。
「・・・・・・すっごいアヤシイんだけど。林檎まるかじりとかってオチだったら怒るよ?」
席につくと、知盛を探す。
「ちょっと〜!知盛さんどこ?ほんとに将臣くんがひとりで作ったのぉ〜!やだぁ〜〜〜」
ムンクの叫びのように、顔を引きつらせる。
「っんだよ。信用ねぇなぁ〜。ま、仕方ねぇケドな。知盛はあそこで林檎見てる」
オーブンの前に座っている知盛。ちょうど焼きあがったらしく、可愛らしい焼きリンゴが出てきた。
「きゃ〜!焼きリンゴになったんだ。小さくカットしてあるなんて、親切ぅ〜v」
丸ごと一個ではなく、小さくひとつひとつ並べられている。
「・・・・・・遅かったな。ま、将臣をからかっていた時間分遅く見積もったから、焼き立てだぜ?」
「あ!知盛ばっかいいカッコすんなよ。こっちもあるんだぜ〜。約束のアップルパイ!」
テーブルに置かれたアップルパイは丸かった。
「わ・・・・・・こんなに頑張っちゃったの?将臣くん、どうしちゃったの〜〜〜」
「へへっ。俺だって真面目にやればこのくらい・・・・・・・」
カウンターから知盛が紅茶を出した。
「アップルティーになるくらい分厚い皮なら剥けたよな?」
紅茶のセットをトレーにのせながら、将臣が項垂れた。
「バラすなよ・・・・・・。とにかく!食ってみろよ、美味いハズだぜ?」
先に味見もしないで待っていてくれたのだ。
は嬉しかったが、そこは素直に言えずに、
「じゃ、将臣くん。パイを切り分けて?」
パイの皿を将臣の方へ押した。
「へっ!任せろよ。これは硬いから上手くいくと思うんだよなぁ・・・・・・・・・・・・」
残念ながら、スポンジでなくとも切る時にはへ込むのだ。少々崩れたアップルパイが切り分けられた。
「ぷっ。パイの切り方も修行しないとね〜〜〜。いただきまぁ〜す!」
将臣は黙っての食べる様子を見守る。
「・・・・・・どうだ?」
「すっごいウマウマ〜〜〜。幸せ〜〜v」
紅茶を飲むと、今度は焼きリンゴへフォークを伸ばす。
「うにゅんv こっちもウマウマ〜〜〜。売れるよ、コレ。リンゴ尽くしだ〜〜。紅茶もいい香り!」
「マジ?!知盛、売ろうぜ」
将臣も安心してパイへフォークを突き立てる。
「・・・クッ、将臣が林檎を剥くならな」
のんびりとした足取りで将臣の隣の席へ腰を下ろす。
「お嬢さんウケするように、砂糖少なめ、林檎多めにしたんだが・・・・・・」
知盛もパイへ手をつけた。
「ね〜〜?美味しいですよ!定番商品に入れるとか・・・・・・」
が身を乗り出して知盛へアピールすると、額を指で突かれた。
「・・・・・・俺の手間が三倍以上だ。数日くらいはいいがな」
味は予想通りだったのか、知盛は紅茶を一口飲むと焼きリンゴへ手をつけていた。
「あちゃ〜〜!将臣くんの新作がお店に並ぶ日は遠いね?」
が向かいに座る将臣を見ながら首を傾げた。
「・・・・・・俺のせい?でもな〜、つるっとなっちまって。林檎がこんなになっちまうんだよな〜〜〜」
将臣が手で大きさを表現した。両手サイズが片手に変身するのだ。
「・・・・・・それは・・・・・・材料の無駄が多くなりそう・・・・・・・・・・・・」
すべてを語ることのない知盛の真意はコストにもあるのだとわかり、は内心笑いたかった。
「何事も、練習、練習だよ〜。将臣くん!」
パクパクと食べ続けるをみると、本当に美味しいのだと将臣は安心して自分も食べる。
丸かったアップルパイは、残り半円になっていた。
「将臣、アレ用意して来い」
「・・・俺〜?」
将臣が立ち上がる。
「綺麗に飾りつけしてこい。ついでにこっちも」
知盛がティーポットを手渡した。
「ちぇ〜〜。ま、いっか。、まだあるんだぜ?少しだけ腹空けとけよ」
「まだって・・・・・・そんなに将臣くん、頑張っちゃいました?」
流石に悪いと思ったのか、の顔色が変わる。
「・・・クッ、気にするな。あいつがしたのはリンゴを小さく剥いて卸したくらいだ」
が首を傾げた。
「卸す?・・・風邪ひきさんの時に食べるアレ?」
「そのうちわかる」
そう言われては待つしかない。大人しく将臣が戻るのを待った。
「俺が卸したリンゴのシャーベット!一応可愛いつもり」
高さが低いグラスに飾りつけされたシャーベットは、確かに可愛かった。
「・・・・・・林檎が化けた・・・・・・」
はびっくり目のまま、向かいに座る男二人を眺める。
「休日出勤って・・・いいかも・・・・・・・・・・・・」
「バ〜カ!たまにだからサービスしてやったんだよ。土産もあるからな」
将臣にまで額を突つかれてしまった。
「お土産〜〜〜?」
シャーベットを口に運びつつ、聞き逃さないに笑う将臣。
「っとにしっかりしてんな〜。知盛がタルトタタンも焼いたんだよ。友達とでも食えば?」
が知盛を見れば、ニヤリと口の端を上げて笑われる。
「素敵なオネエサンに頂いた林檎だもんな?」
「なっ・・・・・・そっ。それは・・・・・・・・・」
が大人しくなった。
「・・・クッ。こちらも色々作れて楽しかったし。・・・・・・林檎の代金はケーキで我慢しとけ」
立ち上がると、軽くの頭を撫でて知盛がカウンターの内側へ戻る。
しっかりケーキの箱が用意されていた。
「・・・・・・ありがとう・・・ございましたっ」
立ち上がると、二人へ向かって頭を下げる。
「気にすんなって!俺も知盛に言われた事しかしてねえし・・・・・・次こそは俺が全部作るからな!」
お礼を言われて嬉しかったのか、満面の笑みの将臣。
「・・・・・・かなり待たされそうだね、それ」
の呟きに将臣の頬が引きつる。
「・・・いい度胸してんな。実験作、めいっぱい食わせてやる」
「そうだね。素材を活かしてんだよね。失敗しちゃうのなんて、愛嬌だよ」
少しだけ素直になれないまま、残りのシャーベットを食べる。
嫌だと思っていた土曜日の仕事が、一番楽しい時間に変わったある日の出来事。
本日は、臨時休業のカフェ・デ・プラタ。
これからは土曜日の午後、時々お休みになります。
バイトくんのお菓子修行のために───
(Printing day:2005.09.21)
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