[ チモリネコ? 第6話 ]





 朝から雨降り。
 チビ将臣は窓辺でひたすら外を眺めていた。
「あ〜ぁ。つまんないなぁ。外で遊べなくてさ。ね?チモリ」
 将臣が振り返ると、いると思っていた知盛はいなかった。

「チモリ〜?」

 呼べども返事はない。
 雨の日に、ひとりで遊べるほどチビ将臣は大人になりきれていなかった。

「チモリ〜?どこ?ね〜、返事しろよ〜〜ぅ」

 全ての部屋を見たが、知盛の姿はなかった。
 雨が葉にあたる音が響く部屋。
 まだ昼なので、そう暗くはないが、将臣の中では部屋が真っ暗な気がした。

「チモリ・・・雨なのに出かけた・・・・・・俺に黙って・・・・・・」

 いつ出かけたのかもわからないほど、外を見ることに熱中していたチビ将臣。
 空を睨んでいただけなのだが、頭の中は空想でいっぱいだった。
 
 晴れたらチモリと追いかけっこ───
 家の中は退屈だ。
 チビ将臣は、どちらかと言えば身体を動かすのが好き。
 そんな事を考えてはいたが。

「おいてけぼり・・・・・・チモリ、何して遊んでるんだろう」
 遊んでもらえなかったのは、自分に問題があるのかと心配になる。
 
 他の友達と遊びに行った?
 もう将臣とは遊んでもつまらない?
 将臣が面倒?

 どんどん思考が後ろ向きになり、家の玄関でしゃがみ込む。
 雨の日は、とかく鬱になりやすい。
 チビ将臣も、例外ではなかった。



「チモリぃ・・・帰ってきてよぅ・・・・・・」
 チビ将臣の目には、涙が盛り上がってきた。
 もう少しで零れそうな勢い。
 その時───

 パタンッ───

「・・・何バカ面してるんだ?将臣」
 なにやら箱を小脇に抱えた知盛が帰ってきた。
「だ、だって・・・チモリが・・・俺に内緒でいなくなるから・・・・・・」
 目を閉じた拍子に、チビ将臣の涙が零れた。
「・・・・・・はぁ〜〜。出かけるって言ったら、返事しただろオマエ」
 チビ将臣の頭を軽く叩くと、知盛はさっさと家の中へ入る。
 将臣も知盛の後に着いて行く。
「してない。聞いてない、そんなの」
 知盛の服を引っ張り、振り向かせようとする将臣。
「した。・・・・・・間違いなく、窓の外見ながら。ついでに歌も歌ってただろ」
「・・・・・・・・・・・・」

 チビ将臣、必死に回想する。
(歌〜?そんなの、歌ってな・・・・・・あっ!)
 確かに歌っていた。雨が止んだら、外へ行こうみたいな自作の歌を。
「・・・歌は歌ってたけど・・・・・・チモリに返事はしてないよ」
 これだけは譲れない将臣。知盛の方が折れた。
「そうか・・・じゃ、悪かったな。泣くほど心配だったのか?」
 チビ将臣を知盛は抱きしめた。
「そんな事ない!チモリ、冷たい。濡れてる」
 将臣に言われてカラダを離す知盛。
「ふぅ・・・・・・泣いてたくせに」
 将臣に背中を向けると、タオルを取るために歩き出す。

「待って!おいてくなよぅ」
 チビ将臣が知盛の服を掴む。
「・・・クッ、どっちなんだよ?冷たいだの、おいていくなだの。退屈なら、箱のお菓子でも食べてろ」
「お菓子?!」
 チビ将臣の瞳が輝き出す。
「ああ。雨で退屈だろうし。腹も減るだろ?だから買ってきた」
 
 猫耳族にも、人間と同じように仕事もあれば店もある。
 ただ、知盛がつるむのが好きじゃなかっただけだ。
 今日は、雨で将臣が退屈しないように、久しぶりに買い物をして来た知盛。

「・・・・・・買えるの?どこで?」
 知盛の言葉に素直に反応するチビ将臣。
「そうだな・・・今度デートってやつをしよう。晴れたらな」
 自分の頭にタオルをのせ、別の新しいタオルで濡れてしまった将臣を拭く知盛。
「“でーと”って何?」
 知盛の口角が上がったのを、チビ将臣はタオルで拭かれているため見ることが出来なかった。
「一番の仲良しが出かける事だ。わかったら、さっさと食え」
 手櫛で将臣の頭を整えてやる知盛。将臣は、テーブルの上の箱に飛びついた。

「何かな、何かな〜〜〜。わわわっ!お菓子がいっぱい!!!」
 蓋を開ければ、駄菓子が盛り沢山、選り取りみどり。
「えっと・・・・・・チモリが好きなのはどれ?」
「・・・は?」
 将臣の向かいに知盛も腰を下ろした。
「あのね、チモリの分を最初から分ければいいんだよ。そしたら、チモリの分、無くならないよ?」
「大丈夫だ。俺は適当に食うから。どれでも好きなの食べろ」
 上目遣いに知盛の様子を窺っていた将臣だが、その一言で勢いよくお菓子を漁り始めた。
「うん!ありがと、チモリ」



 ほんと。お馬鹿さんだよな、将臣は。
 俺のオヤツは、お前なんだって───



 知盛は、将臣が満足するまで駄菓子を食べるのを眺めていた。
 その後にチビ将臣がどうなったかは不明。








(Printing day:2005.06.03)

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