[ チモリネコ? 第8話 ]





 久しぶりの太陽。
 これは・・・約束を果たさなければ、アイツが拗ねるな。
 俺は目を細めながら、太陽を見る。
 
 たとえば。
 雨でも乾燥機がある。
 俺にとっては困ることなど何一つ無い。
 将臣は違うからな。
 あまり家の中にいるのもストレスがたまるようだ。
 今日は・・・約束の買い物に連れて行こう。

「将臣。買い物に行くか?」
「行くっ!」
 ここ数日俺に可愛がられるだけの運動じゃな。
 もちろん退屈させたつもりはないが。
 珍しく将臣から俺に飛びついた来た。
 悪くない。
 戸締りをして出かけることにする。

 

 しばらく仔猫ちゃん達を構わなかったおかげで。
 あちこちから邪魔が入りイライラする俺をよそに。
 チビ将臣は店をあちこちと忙しく見て回る。

 目を離すわけにはいかないんだよ!

 仔猫ちゃんをあしらいながら追いかける。
 オイオイ。
 何処を目指してるんだ?
 駄菓子屋は通り過ぎたぞ。

 まったくもって予想できない将臣の行動。
 何を探してるんだ?

 俺はこの後、激しく驚かされる事になる。
 こいつ、意外と考えてたんだと。
 


 どんどんと路地裏まで突き進むチビ将臣。
 残念ながら、そこから先は危険区域だ。
 お前じゃ無理。
 慌てて追いつき腕を掴むと、駄々を捏ねる。
「まだ、買い物してないっ!」
「・・・そもそもオマエここの通貨持ってるのか?」
 基本的な事だが、将臣が持っているとは思えなかった。
「・・・・・・ない・・・けど・・・でもっ!」
 どうしても欲しいモノがあるわけか。
「一緒に行ってやるから。何が欲しいんだ?」
「痛くなくするので美味しいの!」

 ・・・・・・は?
 コイツの突発言語機能には大分慣れたつもりだったが。
 何だよ、ソレは。
 痛いと美味しいをごっちゃにするな!
 やっぱり馬鹿だ、コイツ。

「・・・頼むから。モノの名前をせめて言ってくれ」
 軽く目頭を抑えながら将臣を問い質す。
「だ、だって。あれの味は美味しくないもん。でも、ないと痛いし・・・・・・」
 俺がいつ将臣に美味しくないモノ食わせたんだよ!
 しかもないと痛いって、意味不明だろ?

「だから!モノには名前があるだろうが・・・・・・」
 あきれ果てた言葉を搾り出す俺に、将臣が項垂れた。
「だ、だって。名前・・・わかんない・・・・・・夜に使うあのヌルヌルの・・・・・・」
 ここでようやく夜の生活必需品を言ってると理解した。
 しかし、味なんて・・・あんなもんだろ?

「・・・どうして味なんて思ったんだよ」
「テレビでイチゴ味ってやってた!きっと美味しいよ〜」
 こいつ、お菓子とアレを勘違いしてやがる。
 しかし、味は盲点だった。確かに味つきは無くもない。
 主に香りで誤魔化されてるけどな。

「イチゴねぇ・・・・・・イチゴなら楽しくなるのか?」
 そう、これは将臣が率先してご奉仕してくれるって事だよな?
 まさに盲点。味があれば、今まで以上に頑張るだろうな。コイツなら。
「イチゴじゃなくてもいいよ!種類がたくさんあった!」
 そうそう、たくさん種類はあるだろうよ。
 こんな買い物なら悪くない。
「そうだな。お前が好きなの選べばいいさ」
 そのまま路地裏の、とあるショップを目指す。以前はよくご利用したものだ。
 しかし、今は俺もそうそうご存知のわけじゃない。
 なんといっても、男とヤッたのはコイツが最初。
 他の用事ではよくご利用した店だけど、この用事ともなれば初心者。

 いざ店に入ると、以前は気づかなかったが野郎が多い。
 コイツは俺のだからな!
 ま、ここいらじゃ俺の顔も売れているだろうから、心配はないが。
「ほら、この棚から選べよ。お前のスキなのを」
 わざと大声で店内に聞こえるように将臣に話しかける。
「うん!すごいたくさんあるね〜。テレビより種類が多いよ?」
 だろうな。お前が見たのはお菓子のCM。精々3〜5種類だろう?
「チモリぃ〜、カプチーノって苦い?」
「さあな。試してみるか?」
「うぅ・・・・・・でも、苦かったらイヤ」
 別に何でもいいんだがな。
 オマエじゃピーチに、メロンに、チェリーくらいか。
 バナナは俺が微妙な気持ちだろう?それはご遠慮してくれ。
 バニラにオレンジ。選びたい放題だな。
 そんなに買っても、使うのは俺たちだってわかってるのか?

 駄菓子の時のように、籠に入れて順番を考えながら並べ直してやがる。
 へえ?将臣的には、やっぱりイチゴなのか・・・・・・。
 次がバニラってのが、オマエ夏はアイスばっか食いそうだな。



 今夜のお楽しみが増えた。晴れの日も悪くない。








(Printing day:2005.06.18)

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