[ チモリネコ? 第10話 ]
「待たせたな・・・・・・」
知盛が家事を終わらせて部屋へ戻れば、じゃれあう三人を目にする。
(やれやれ・・・子供が増えただけだな・・・・・・)
そうは思うものの、チモリの態度が怪しすぎる。
どう考えても計算して子供を演じているとしか思えない。
(チビなわけだし・・・・・・)
しっかりその身体のサイズを利用しているチモリ。
(まあ・・・俺でもするだろうよ?)
さりげなく、チビ臣を抱き上げる知盛。
「ほら、行くぞ。今日は曇りで涼しいしな」
目指すは近くの野原。
昨日は晴れていたので、草も濡れていないだろうし、絶好のお遊びスポット。
ただし、将臣とチビ達による追いかけっこ限定。
知盛が加わる予定はない。
「そうだな〜。今日は、野原がいいな」
将臣もチモリを抱き上げた。
「もちろん、そのつもりだぜ?お前がチビと遊ぶんだろ?将臣ママ」
将臣のこめかみに走る青筋。
「・・・休日は家族サービスするもんだぜ?知盛パパ」
「へえ〜?家族って事は、やっぱりお前が産んだのか」
「うっ・・・・・・」
結局のところ、口では知盛に適わない将臣は黙るしかなかった。
「・・・それは冗談としても。少なくともソイツは事情がわかってるようだしな」
知盛がチモリと視線を合わせた。
「・・・さあ?」
「・・・自分でいうのもなんだが。“さあ?”って言う時は、知ってて言わない時だな」
知盛がチモリの眉間を指で弾くと、チモリは両手で額を抑えた。
「駄目だよ、知盛。チモリイジメちゃ。ほらぁ〜、笑えよぅ〜〜」
チビ臣が指で知盛の左頬を突付きまくる。
「・・・・・・(怒)」
鬱陶しいものの、相手はチビ臣といえど将臣。
知盛、じっと耐えていると、気を良くしたチモリも知盛を刺激する行動をとる。
「ママぁ〜、おっぱいぃ〜」
将臣にしがみ付き、さりげなく胸の辺りに手を這わせる。
「・・・・・・(怒)」
相手はチビな自分。首を絞めたい衝動を堪えていると、将臣が困ったようにチモリを抱えなおす。
「・・・でるか・・・・・・そんなもん、でたら怖い」
将臣は、現状を把握していない。
知盛がからかって“将臣が産んだ”と言っているのを、半ば信じ始めていた。
(俺・・・マジでこいつら産んだのか?このままだと・・・体がオンナになっちまうのか?)
やや思考が空転気味である。
「将臣。言っとくが、こいつらは俺達の分離体であって。細胞分裂だと思えばいい。たぶんな」
知盛が己の見解を述べると、チモリの身体が震えた。
「・・・クッ、アタリみたいだな。ほら、着いたぞ」
一面の緑の野原。チビ臣は、さっさと知盛の腕から飛び降りて走り回る。
「わぁ〜い!ひろぉいなぁ〜〜〜。あっ、蝶だ!」
ひらひらと飛ぶ蝶を追いかけ始めるチビ臣。
それを見守りながらも、知盛はチモリを将臣の腕から受け取る。
「・・・で?原因はカプチーノか?いつもどるんだ?」
「ソレだけが原因じゃない・・・満月にえっちっていう条件が揃わないと。一日で消えるし、かまわないだろ?」
どこか開き直ってチモリが知盛と将臣に事の真相を告げた。
「一日ねぇ?」
チモリの発言からして、一日で消えてしまうのは本当らしい。
「・・・そっか。じゃあ、次に会えるまで一ヶ月だな。もったいないから、早く遊ぶぞ〜!」
将臣がチモリを知盛の腕から奪い取り、野原に立たせる。
「俺が鬼な。捕まったら鬼は交代。先にチビ臣見つけて一緒に逃げろな?十数えたら追いかけるぞ」
「・・・わかった」
チモリが野原を駆け出した。
「なぁ。あれってさ、身体が小さいだけじゃなくて精神年齢も子供みたいだよな?」
将臣が知盛に確認する。
「・・・そうだな。どうも記憶と身体が分離する代物らしいな、あのカプチーノ味の・・・・・・」
「うわぁぁぁぁ!全部言わなくていいからっ!!!」
真っ赤になって将臣が知盛の口を手で塞ぐ。
(やっぱり馬鹿だ、コイツ。あんまり子供の時から成長してない───)
将臣の手のひらを舐める将臣。
「わっ!何するんだ」
「何って・・・味見?満月の夜の夫婦生活は確約なんだろう?」
将臣の手首を掴み、知盛がニヤリと笑いかける。
「・・・・・・ウルセっ!俺は鬼だから、行くっ!」
将臣が知盛の手を振り切って走り出す。
(ほら。成長してない。だが───)
いかにも将臣らしい。“次に会えるのは───”
そんな事は、知盛は思いつかなかった。
(後で“カプチーノ”の出所を確認しておかないとな・・・・・・)
満月の日のえっちは条件でしかない。前提として必要なものは、やはりあのカプチーノ味の───
(どうしてそんなに“ローション”って言うのが嫌なんだか・・・・・・)
知盛にしてみれば、好きになった相手の性別が同じだったというだけの事。
別段、気にするような事はどこにも、何もなかった。
(将臣は、気にしてるのか?)
三人の走り回る姿を眺めながら、草の上に寝転ぶ知盛。
嫌でも離してやらないけどな?
知盛の頭の中では、カプチーノ味ローションの他の効果をチモリから聞き出すべく、策略を巡らせていた。
次の満月は28日後。
これから色々楽しくなりそうだ───
いつの間にか鬼が交代したらしい。
チビ臣が元気にチモリを狙って追いかけている。
「なぁ、知盛。夕飯はさ、豪華にしねえか?あいつらが消えちまう前にさ」
寝転んでいる知盛を覗き込む将臣。
「ああ。帰りに好きそうな物買って、消えちまうまで過ごそう」
「さんきゅ。やっぱさ、また会えるって言っても消えちまうんじゃな・・・・・・」
将臣が知盛の隣に腰を下ろした。
「で?ママは、俺だけじゃご不満だと」
知盛も身体を起し、将臣の隣に並んで座る。
「・・・不満ってわけじゃ。たださ、俺がコドモ産めないのは事実だろ」
将臣の耳は真っ赤になっていた。
「・・・将臣、確認するが。俺とのえっちが嫌で“ローション”って言えないんじゃないのか?」
「なっ!ばっ、バカ!それは・・・毎日ソレしかしていないようで・・・身体の繋がりだけっていうか」
「だからお馬鹿さんなんだよな、将臣は。俺がどんなに大切にしてるかも理解出来ないなんてな・・・・・・」
野原で知盛と将臣がキスをする。
何度も将臣とキスをしていると、突然知盛と将臣の背中を突き飛ばす物体が二匹。
「パパとママが鬼ぃ〜!チモリ、逃げよぅ〜〜〜」
「ああ」
チビ臣とチモリが駆け出して行く。
知盛がさりげなく将臣の肩を叩いた。
「じゃあ・・・そういう事らしい。頑張れよ?」
知盛も走り出す。
「・・・チッ!俺が鬼かよ〜〜〜〜〜、待てっ!」
将臣も駆け出した。
曇り空、風がさわやかなある日の出来事。
(Printing day:2005.07.02)
Copyright © 2005-2005 Sui Tsukuyomi. All rights reserved.
![]()
![]()
![]()