[ チモリネコ? 第14話 ]
遊び疲れたのか、チビ臣とチモリは畳んだタオルを枕に昼寝中。
隣のレジャーシートでは、昼の片付けを終えた知盛と将臣が並んで座っていた。
「なんつ〜か・・・知盛が用意が良くて意外だったな・・・・・・」
隣ですやすやと眠るチビたちを眺める将臣。
読んでいる本から目を離すことなく知盛が返事する。
「・・・・・・我が家は・・・・・・ママが料理をしないから・・・・・・だろ」
「ん〜、そういうんじゃなくて。こう・・・遊び道具やら着替えやら。準備万端ってトコがだよ」
今度は海へ視線を移す将臣。
「お前さ、コドモ嫌いそうだし・・・・・・面倒は嫌いそうだし・・・・・・コイツら大切にしてて意外・・・待て。俺がママ?」
片眉を上げて、不服そうな表情を見せる知盛。
「・・・ば〜か。こいつ等の中ではそう決まってるようだぜ?お前だって“ママ”って呼ばれて返事してただろうが」
「・・・・・・知盛が旦那かよ・・・・・・うわ・・・・・・・・・・・・」
首を項垂れさせる将臣を抱き寄せ、耳元へ囁きかける知盛。
「本質をよくわかってるよな?チビたちは・・・・・・夜は俺にどうされる側だ?」
一瞬で将臣が首まで赤くなる。
「なっ、ばっ!何こんな昼間の海で夜の話してんだよ!」
大声になった将臣の口を手で塞ぐ知盛。
「・・・クッ・・・・・・ガキどもが起きるだろ?起きたらまた大変だ・・・・・・・・・・・・」
軽く将臣の唇を掠め取ると、再び本を開き何事もなかったように読み出した。
「・・・・・・ばぁ〜か。でもさ、人数多いのは楽しいよな。あれだな、もしも家族だったらこんな感じかな〜とか」
伸びをすると、そのまま後へ倒れて将臣も昼寝を始めた。
「・・・・・・お前が家族ごっこをしたいらしいから・・・付き合ってるだけだ。それなりにメリットもあるしな?」
眠っている将臣の額を軽く撫で、寝相が悪いチビ臣を見る。
知盛が動く前に、チモリが起きてチビ臣のバスタオルを掛けなおした。
「・・・起きてたのか」
「最初から寝てない」
将臣を乗り越えて、知盛の隣へ移動してきたチモリ。知盛の背に寄りかかって座る。
「・・・どうした?」
「あのさ・・・・・・次も・・・約束守れよ?」
自分の分身にしては素直なチモリに、知盛が目を見開いた。
「・・・・・・チビ臣が楽しければいいんだ・・・俺は。・・・・・・お前だって同じだろ?」
「・・・クッ、明快な答えだな」
背中に居るであろう相手に手を出すと、小さな手が手のひらを合わせてきた。
バスタオルを勢いよく跳ね除け、チビ臣が目覚めた。
「れ・・・・・・チモリ?チモ・・・・・・」
周囲を見回すと、知盛の背で手を振っている。
「・・・ココ。よく寝てたな」
「・・・・・・ずるーい!チモリばっかりパパと遊んで」
まだ昼寝中の将臣を飛び越えてチビ臣も知盛の背中に陣取る。
「・・・・・・俺の背中は背もたれ代わりか?」
口の端を少し上げて笑いながら、袋からペットボトルを取り出す知盛。
「ほら、融けかけで冷たいぞ」
凍らせておいたスポーツドリンクをチビたちに一本ずつ手渡す。
「わ〜。家はパパがママみたいだね!チモリ。何でも出てくる〜〜〜」
チモリは黙って頷いた。
「ふぁ〜〜〜〜〜。・・・よく寝た」
大欠伸で将臣が目覚める。
「おっ。三人で仲良ししてんな〜〜〜」
知盛は本を読んでいるだけなのだが、その後で遊ぶ二人が楽しそうだ。
「・・・クッ、バカ言う暇があったら遊んで来い」
チビたちは将臣が起きないと海へ行けず、待ちながら遊んでいたのだ。
「そぉ〜だよ。ママがいないと海へ行っちゃダメぇ〜ってパパが言うんだもん」
チビ臣が将臣の手を取って急かす。
「・・・・・・知盛は海へは行かないわけね・・・・・・・・・・・・」
「・・・面倒。ベタベタになる」
将臣がチビ臣を抱えて立ち上がる。
「んじゃ。遊び担当のママがお相手仕りますよっと!」
肩へチビ臣を乗せると、海を目指して駆け出した。
「・・・・・・無駄に元気だ」
チモリがゆっくり立ち上がる。
「・・・クッ、そう言わずに行って来い。・・・小さい西瓜も持って来た。もう少しでおやつの時間だろ?」
知盛が腕を上げると、チモリがその腕にある時計で時間を見る。
「・・・・・・時計より、チビ臣の腹の方が正確だぜ?」
そう言うと、チモリも二人の方へ駆けていった。
「腹時計か・・・・・・帰りは荷物が軽くていいな」
最後の大きな荷物を叩くと、“ポンッ”といい音がした。
「パパ〜〜〜、おやつ!今日は何ぃ?」
まさに三時きっかりにチビ臣が知盛の許へ走ってきた。
「・・・・・・食いたかったら、棒を探してくるんだな?」
「棒〜?」
首を傾げているチビ臣。
後から戻って来たチモリと将臣が知盛の行動を見守ると、取り出されたのは手拭と小さな西瓜。
さらに、西瓜はビニール袋に入れられた。
「・・・西瓜割り・・・知らないか?」
「はいっ!知ってる〜〜〜。棒探しに・・・・・・」
チビ臣が飛び出すより早く、チモリが棒を差し出す。
「わわわっ!チモリってすごぉ〜い。どうしてわかったの?」
どうしても何も、先に知っていれば準備は簡単だ。
「・・・お前が早く割らないと、おやつ無しになる」
「大変だ!チモリ、ママ。早く、早くぅ〜〜」
棒と手拭を掴んでチビ臣が砂浜へと戻った。
「・・・・・・俺が西瓜を持つわけね」
将臣が片手で袋に入った西瓜を持ち上げる。
「・・・わかってるなら早くしろ。アイツが一度で割れるとは思えないだろ?」
西瓜はそう大きなものではなくとも、チビサイズの二人には十分な大きさだ。
「はい、はい、はい。家はママがチカラ仕事だしな〜〜〜」
出来るだけ平らな場所を探して西瓜を置くと、チビ臣が西瓜割りを始めた。
「チカラいっぱにに叩いて・・・・・・あれじゃ西瓜が粉々だ・・・・・・いや、丁度いいか・・・・・・・・・・・・」
チビなのだから、チカラも弱い。
ボコボコと砂を叩いては砂煙を上げているがそう強いものでもないだろうと知盛は三人を眺めていた。
二十分程して西瓜が割れた。
将臣が丁寧にビニールをあけて、一番大きな西瓜をチビ臣へ手渡す。
チモリは小さい方を指差していた。
「おぉ〜〜い!知盛は食わねぇのか?」
叫ぶ将臣に首を横に振って返すと、三人が西瓜を食べる様子を眺めながら呟く。
「俺が食べるのは将臣だって・・・いつも言ってるだろうが・・・・・・・・・・・・」
チビたちが居なくなると急に静かになる。将臣は意外に寂しがりだ。
「今晩も・・・楽しくやろうぜ?」
口元に浮かんだ笑みを収めると、西瓜割りの残骸を片付けるべく立ち上がった。
程よく日も傾いたので、帰り支度を始める知盛。帰りの荷物は半分だ。
「・・・将臣、ソレ背負え」
知盛が指差す先には、チモリにもたれて寝かかっているチビ臣がいた。
「・・・・・・俺の方が重くね?」
「行きは俺の方が重かったと思うんだが?」
しっかり言い返され、将臣がしゃがんでチビ臣へ声をかける。
「ほら!自分で飛び乗れ」
「・・・うん」
よじよじと将臣の背中を移動して、肩にしっかり掴まるチビ臣。
将臣がチビ臣の身体に手を添えて立ち上がる。
「チモリは眠くないのか?」
微妙に揺ら揺らしながらも、いちおうは自力で立ち上がるチモリ。
「おい、知盛!」
知盛の背中を掴むと、チビ臣をその背に移動させる。
「・・・冗談・・・だろう?」
知盛が不愉快そうな顔をして将臣を振り返る。
「いいや。大マジ。荷物は俺が持つから、ソイツ頼む。もう寝てるから」
知盛の肩から荷物を取ると、再びしゃがんでチモリを呼びつける将臣。
「ほら。お前はこっちだ。無理してないで乗れ。体が小さいんだ、体力だって半分以下にきまってんだろ」
しぶしぶと将臣の背に近づくと、ちょこんと首に飛びつく。
「片手しか空いてないから、しっかり掴まってろ」
将臣が知盛に追いつくべく少し早足で歩き出す。
「少しは待とうとかないわけ?」
ようやく隣に並んだ将臣が知盛を見る。
「・・・・・・荷物を増やされたんだ。早く帰るに限るだろ」
口では不満を漏らしながら、夕日に染まる顔は笑っていた。
「まあ・・・でも、いいだろ。ソレも俺だし」
知盛が背負っているのは将臣の分離体なのだ。
「・・・クッ、自分の使い方が上手くて参るぜ」
知盛が将臣に甘いのを知っての発言に、知盛が片眉を上げる。
「それくらい当然。で・・・・・・夕飯どうする?」
「・・・クッ、食い物の心配か。ハンバーグをつけて、ハンバーグカレーにするさ」
そのための大量のカレーだ。
「おぉ!美味そ〜だ。チビ、喜ぶかな〜〜〜」
夕日に照らされ、段々と影が長くなる帰り道。
家族の団欒の後、ようやく知盛に楽しい時間が訪れた・・・らしい。
(Printing day:2005.10.02)
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