[ チモリネコ? 第15話 ]
「・・・・・・いいかげんにっ・・・・・・・しろっ!!!」
将臣、力いっぱいの蹴り。知盛は除けられなかった。いや、除けないが正しい。
「・・・・・・酷い扱いだな?」
しっかりと将臣を組み敷いたままで顔を顔を近づける。
「限界ってもんがあるんだ!いい加減わかれ」
顔を背ける将臣。
「・・・・・・悦んでただろ?将臣は・・・・・・こうされるのが好きなんだよな?」
手はしっかり将臣の尻を撫でており、指はいやらしく動いていた。
隣の部屋へ移動済みであろうチビたち。
ドアの隙間から光が零れている。
(さて。明日は家族サービスだからな?今夜は将臣にサービスしてやるさ・・・・・・)
心置きなく続きを始めた。
翌朝目覚めた知盛は隣の部屋を覗く。
チビ臣とチモリは同じベッドで寝ていた。
チビ臣に追いやられたであろうチモリが壁際で小さくなっているのが笑える。
「・・・・・・こっちもまだ寝てるか・・・クッ・・・・・・」
満月の晩にだけ朝まで許される行為。将臣はまだ真実に気づいていない。
(俺としては・・・・・・そろそろバレても構わないんだが)
限定があるから限定されないものがある。その逆もまた然り。
軽く片眉を上げると、シャワーを浴びて朝食の支度に取り掛かった。
しばらくして、チモリが目覚める。自分の上にあるチビ臣の足を除けて起き上がる。
「・・・・・・まったく。大人なんだから子供に気を遣え!」
昨晩はチビ臣への説明に梃子摺ったチモリ。
「ね〜、チモリ。ママ、泣いてる?パパってさ、意地悪なの?」
「・・・・・・いいんだ。大人はああして確認してるんだ」
急いで知盛たちの寝室から脱出を図ったが、昨晩のチビ臣は半眠りではなく起きていた。
「何を?」
ここですんなり“愛情”とでもいえればいいが、それは言葉にすると嘘くさく軽い。
「・・・・・・気持ちイイ事」
チビ臣が首を傾げる。
「じゃ〜さ、俺たちも気持ちイイのする?」
「・・・・・・パパとママは大人で夫婦だからしてもいいけど、俺たちは違う。わかったら、寝ろ」
頭の上に“?”が山ほど飛び交っている様が面白いが、ここでチビ臣に真実を告げるつもりはない。
するとチビ臣の興味が別のものへ移った。
「チモリ〜、満月だよ?お月見しよ?」
「・・・・・・少しだけだぞ?」
ずるずるとベッドから被るものをとり、座って二人で被った。
窓の外には、青白いまんまるな月。
明日は何があるのだろうと話すうちに眠りが訪れていた。
「・・・・・・はよ。少しはコドモに気を遣えよ」
台所で朝食を作る知盛の手伝いにチモリが起きてきた。
「・・・クッ、おはよう。ただで見られて楽しかっただろ?それとも・・・両親が仲良しで喜ばしいとでも?」
気にする風でもなく、せっせとミニ目玉焼きを作り続ける知盛。
「今朝はパン?」
「目先が変わっていいだろ。どうせチョコクロワッサンだろうな、チビ臣は」
テーブルの真ん中に置かれたカゴに数種類のパンが入っている。
バターロールもクロワッサンもその他のパンもサイズが小さく種類が多い。
「・・・ウインナー・・・タコ・・・・・・鶉が顔になってる・・・・・・」
「チビはこういうの好きだろ?・・・違うか?」
チモリは黙って頷いた。知盛は正しい。プレートに細々と並べられた細工を施された小さなおかずたち。
いかにもチビ臣が喜びそうなものだった。
「スープも出来てるし・・・チビ起こして来い。ついでにママもな」
わざわざ起きる時間に合わせて作っているのだから、温かいうちがいい。知盛は親指で寝室の方を指す。
「・・・わかった」
チモリが小さな足音を立てながら二人を起こしに行こうとすると、将臣がぐったりと起きてきた。
「・・・・・・おう。おはよう、チモリ」
軽くチモリの頭を撫でる将臣。
「・・・はよ、ママ」
“ママ”と言われて項垂れつつも、次の瞬間にはしっかりと顔を上げて知盛を睨みつける将臣。
「知盛!お前なぁ・・・・・・突っ込む側だからいいんだろうが、俺は重労働なんだっ!!!」
足元をぐらつかせながらも根性で知盛を睨み続ける。
「へぇ・・・・・・“突っ込む”ねぇ・・・・・・コドモの前だぜ?ママさん。少しは恥らえよ?朝から入れられる話なんてな」
下を向いて忍び笑いを漏らす知盛。
将臣がゆっくりと振り返れば、そこには寝癖のチビ臣とチモリが立っていた。
将臣の片頬が引きつる。
「はいっ!おはよ〜、パパ、ママ」
元気に片手を上げて挨拶をするチビ臣。
「あのね、“気持ちイイコト”してたんでしょ?知ってる〜〜〜。それより、朝ご飯だよねっ」
言いたい事だけ言って、洗面所へ走っていったチビ臣。
ダメージを受けた将臣はその場に膝をついた。
「なっ・・・・・・どっ、どうしてチビが知ってるんだ・・・・・・・・・」
将臣の肩をチモリが軽く叩く。
「・・・・・・ママが泣いてるのと勘違いしてたから説明しただけだ」
益々将臣を落ち込ませる発言をして、チモリはさっさとスープの入ったカップを並べる手伝いを始める。
「将臣。軽くシャワー浴びて来い。すぐに・・・いや。先にメシ食べるからな」
あのチビ臣の様子では、将臣が戻ってくるまでの十五分は待てそうもない。
「・・・ああ。いいぜ、食ってて」
ヨロヨロと将臣が歩き出すのと入れ替わりにチビ臣が戻ってくる。
「れ〜?ママも早く!ご飯だよっ」
元気に自分の椅子に座るチビ臣。
「わぁ〜〜〜。たくさんある・・・・・・・・・・・・」
目を輝かせてテーブルの上を眺める。あれも、これも食べたい。
手で口元を拭う仕種が小さいから可愛いが、大人になってしたら犯罪ものだ。
「ママは・・・後で来るから、先に食べるぞ」
「は〜い。いただきますっ」
「・・・いただきます」
フォークを握り締めてわしわしとサラダを食べ始めるチビ臣。チモリは静かにスープを飲んでいた。
「今日は何するの〜〜?」
食事も終わり、台所で片付けをする知盛とチモリの後ろでチビ臣がウロウロしている。
「今日は・・・散歩して・・・ススキを取って。団子も作って、夜は月見だ。・・・・・・後は何がしたい?」
「ダンゴ?!」
チビ臣の耳がピクピクと反応する。
(・・・クッ、そういや将臣は団子で釣ったんだったな・・・・・・・・・・・・)
知盛が食べている団子を羨ましそうに見ていたのだ、将臣が。それが二人の出会い。
「ああ。団子・・・好きなんだよな。おやつも団子にするか?」
コクコクとチビ臣が頷く。
「・・・クッ、了解。おやつには三色団子にしような」
月見の団子は白い。チビ臣が言う団子は三色の串刺しの方だろう。
両方食べさせれば文句はないハズである。味にそう違いはない。
「ママ。お前が散歩担当だ。帰りにススキを取って来い。昼は・・・・・・焼きソバだからな」
「焼きソバ!好きっ。ね、他には〜?」
焼きソバの他とは?知盛の方が質問したいくらいだ。
「・・・・・・春巻きでもつけるか?」
「うん!」
軽くその場でジャンプするチビ臣。どうやら一品ではなければいいらしい。
(・・・クッ、姫君はグルメでいらっしゃる・・・・・・・・・・・・)
小さくとも将臣である。
「将臣、昼には戻れよ?」
時計を指差す知盛。
「・・・・・・りょーかい。チビども、行くぞ。今日は・・・かくれんぼだからな」
将臣が玄関を開けると、チビ臣が飛び出す。
「わ〜〜い!ママが鬼ぃ」
チモリはのんびり二人の後を追っていた。
「さて・・・・・・焼きソバは簡単。春巻きもすぐ出来るとくれば・・・・・・団子か・・・・・・」
午後には月見用の団子作りをチビたちにさせようと思っていた。
が、三色団子はその前に完成している必要がある。
「ついでに月見のウサギでも作るか・・・・・・」
月見団子は所詮まっしろまん丸なただの団子である。作らせても、食べる段階で飽きられたら面倒だ。
知盛は、ウサギの形の団子にカスタード入れたものと餡子を入れたもの、二種類作る事にした。
「腹減った〜!昼飯すぐ食えるか〜?」
「減った〜〜!」
「・・・・・・・・・・・・」
お昼少し前に三人がススキを手に帰ってきた。
ススキを受け取ると、知盛が黙って洗面所の方向を指差す。
「・・・・・・ハイ。すんません。ほら、手洗い、うがいしないとパパの機嫌が悪くなるからな〜〜〜。あれ?」
「は〜い!」
返事をしたのはチビ臣だけで、チモリは言われる前にもう洗面所へ行っていた。
「・・・・・・俺らだけってことね」
チビ臣を片手に抱えて、将臣も洗面所へ向かおうとすると、
「着替えもな。その服でこれ以上歩かないでくれ」
指差された床を見れば、落ち葉や土が落ちていた。
「あ、あはは〜・・・・・・。気合を入れてかくれんぼしてきたんだよな!」
「な!」
二人は顔を見合わせて“にぱっ”と笑った。
「・・・・・・チモリはえらいな。お前は着替えなくて良さそうだ」
既に手洗い、うがいを終えて戻って来たチモリの服は汚れていなかった。
「おっ?!どうしてだ?」
将臣が首を傾げる。
「・・・普通、入る前に玄関で叩くし。俺は地面を転がったりしていない」
ツイ〜っと知盛のところへ来て手を引く。
「食事の準備手伝う。こいつら時間かかりそうだし」
「・・・クッ、そういうなよ。お前はこっちだ。出窓に準備してある」
チモリが首を捻ると、出窓に月見の準備がしてある。
手渡されたススキを生けるべく、チモリはススキを小分けにしながら窓辺へ向かった。
騒々しく昼を食べ終えると、チビ臣は既に船漕ぎ状態。
「将臣・・・お前も眠そうだ・・・昼寝してこい」
チビ臣を片手に抱え、チモリの手を引きながら知盛がソファーで寝かかっている将臣に声をかける。
「んあ?ああ・・・・・・誰かさんの所為でな・・・・・・腰いてぇし・・・・・・眠い・・・・・・」
まったく動く気配がない。知盛は一度チビ二人を寝室へ置いてくると、将臣にタオルケットをかけた。
「・・・クッ、よくお眠りになる事で。眠り姫さん・・・・・・」
今の間に眠ってしまった将臣の額へ軽く唇を落とした。
今宵の月は、十六夜の月───
(Printing day:2005.10.13)
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