[ チモリネコ? 第19話 ]
様々な食材を台所のテーブルに広げて、手際よく料理を作っている知盛。
その後姿を、せんべいを食べながら眺めている将臣。
「・・・・・・それってさ、芋羊羹?」
「ああ。正しくは十三夜にするんだが・・・・・・チビたちも居た方が楽しいだろう?」
芋名月。別の名を栗名月とも呼ばれる。
「それはそうだけど・・・・・・あっちも、こっちも・・・俺も手伝うか?」
悪いとは思うのだが、手伝えない雰囲気なのだ。それでも、言葉にしてみた。
「・・・クッ、気にするな。将臣が痩せちまったら、俺に不都合」
知盛が将臣に近づくと、その唇を味わう。
「・・・イイ子だから、零さずに食えよ?」
テーブルの上を軽く指で叩く知盛。
そこには、将臣が食べたおせんべい他の食べ零しがあった。
「・・・・・・コドモ扱いしやがって。まだ食うから、食べ終わったらまとめてするさ」
再びテーブルに片肘をつき、知盛の後姿を眺める。
「・・・クッ、ぜひそうししてくれ」
ピザ生地の準備を終えた知盛は、それを冷蔵庫へしまう。
煮物をしているであろう鍋が、いい匂いを辺りに漂わせる。
それよりも、その食べ物を作る人物が気になって仕方ない。
(・・・・・・無駄にエロいよな、知盛は)
顔はいい。最高の部類だと思う。声も悪くない。声よりあの話し方の方が曲者だ。
顔が見えない後姿までもが人目を引く。
(あれだなぁ〜、無駄な肉がないんだろうなぁ・・・・・・ぷよぷよってのが)
しばし想像で意識を飛ばす。正直、肩幅の広さが羨ましくもあり、嬉しくもありなのだ。
男としては羨ましいのだろう。だが、安心感もあるのだ。
「・・・クッ。それで?見惚れるほどイイオトコか?」
甘栗の袋を持った知盛が将臣の隣に立っていた。
「あっ?!・・・あ、ああ。オマエって、全身エロ過ぎだよな〜〜って・・・・・・」
知盛の手から袋を奪う。
「・・・欲しけりゃいつでもどうぞ?」
将臣の頬へ手を添えて、親指で唇をなぞる。
「・・・・・・っとに、何言ってもエロだし。少しは真面目に・・・・・・真面目な知盛だったら、一緒には暮らしてねぇだろうし」
将臣が大きく溜め息を吐き出した。
知盛の視線が、一瞬動いたのは見逃した様だ。
「・・・将臣。今夜は焼肉にしようかと思っていたんだが・・・・・・」
テーブルの上の菓子の屑を軽く手で床へ落とす知盛。さらに、将臣の手から甘栗の袋を奪うと、反対の椅子へ置く。
「焼肉?!だったら・・・・・・そうだなぁ。甘栗はもう食べない方がいいよなっ。たくさん食べられなくなるし」
知盛の行動を勘違いしている将臣。お菓子の食べすぎを注意したわけではない。
「・・・クッ。それなら問題はないさ・・・・・・今から軽く運動するんだからな」
将臣を立たせると、軽くテーブルへ押し倒す。
「うおっ?!な、何を・・・・・・」
一瞬の出来事で、将臣の背中はテーブルの上にあった。
「イイ運動をしようぜ?・・・・・・将臣、“視姦”という言葉を覚えた方がいいな?」
将臣の視線を常に背中に、腕に、指先に感じていた。
将臣にとっては、料理が出来上がるのが楽しみだったのだとしても、知盛にすれば別の意味にしかとれない。
「はぁ?!ちょっ・・・・・・」
起き上がろうとする将臣の肩を押さえつけ、知盛が体を寄せて体重をかけた。
「・・・おかわりっ!」
丼飯を軽く平らげた将臣。
「・・・クッ。食べ過ぎるなよ?」
「うるせぇ!誰の責任だと思ってるんだ、誰の!!!」
「・・・さあ?将臣じゃないのか?」
将臣の目が、知盛を睨み返す。
「誰かさんはぁ〜、都合よく解釈できるからいいよなぁ〜〜〜」
「そうだな・・・・・・将臣がな」
プレートで肉を焼きながら、知盛が箸で摘まんだ肉を将臣の目の前に翳す。
その肉へ食いつく将臣。
「ありえねぇっての・・・ったく・・・・・・」
ブツブツと文句を言いながらも、将臣は夕食を食べ続けた。
「・・・・・・・・・・・・っ!」
チビ臣とチモリが現れたのを、意識を失った将臣へシーツをかけながら感じた知盛。
「・・・・・・あんまり無理させるもんじゃないぜ?」
「ママ、寝てるの?」
チモリの皮肉とチビ臣の純真さ。あまりの落差に知盛は口の端を上げて笑う。
「ああ・・・・・・明日は・・・いや、今日の予定を考えていたようだぜ?それに。お前等のために駄菓子も選んでいたしな」
かなり頭を捻りながら選んでいたのだ。チビ臣の好きなものは簡単なのだろうが、チモリは知盛である。
お菓子を選ぶのは大変だったのだろう。
知盛は二人を手招きする。
「な〜に?パパ」
チビ臣がベッドによじ登って来た。
チビ臣を抱えると、その頭を撫でる。
「・・・・・・戻る時・・・寂しいか?」
チビ臣には難しい質問だったらしい。首を傾げるだけで、返事が無い。
チモリが知盛の隣へ座る。
「寂しいとか・・・ない・・・・・・こうして・・・出てくる時も、分離後からしか記憶は無い・・・・・・」
「そうか・・・・・・」
チモリの頭を撫でる知盛。
「ね〜、ね〜。パパもママも裸だね?」
「・・・・・・クッ、いいだろ?スキンシップだ」
知盛の頭をチモリが勢いよく叩いた。
「・・・・・・余計な事言うな。俺が大変なんだ」
「・・・クッ、それは失礼」
チモリの頭を軽く撫でてから、部屋のドアを指差す。
「・・・それくらいわかってる。臣、行くぞ」
ベッドから降りるチモリ。
「うん。待って!チモ」
すっかりお互いを短く呼ぶ程の仲良しになっていた。
チモリに手を引かれるチビ臣。二人は素直に隣の部屋へ移動した。
二人が居なくなり、隣の部屋のドアが閉まる音を確認してから、眠る将臣の背にキスをする。
「・・・ママは続きをしないとな?」
まだまだ朝にはならない。知盛は将臣へ被せたシーツを剥ぎ取った。
知盛の理論が証明されるならば、本日のチビたちは消えないはずだ。
なぜならば───
「・・・ありえねぇ・・・あ〜、メシが美味い」
なぜ将臣が起きられたかといえば、シャワーを浴びなければいけない状況だったためだ。
朝から風呂場でも一戦交える破目になってしまったが、知盛の手にはしっかりと件のローションが用意されていた。
つい拒みきれなくて、今に至る。
「・・・おはよ、ママ。早いね。でも・・・・・・」
チモリに手を叩かれる将臣。
「イテッ!」
「つまみ食いはダメだな」
誰の機嫌が悪くなるといえば、チビ臣。先に食べていたと知れれば、喚くに違いないのだ。
「へ〜、へ〜。悪うございました!・・・で?チビは?」
「後から来る」
それだけ言うと、さっさと知盛の手伝いを始めるチモリ。将臣は席に着いているだけ。
「・・・・・・チビでも知盛は知盛だよなぁ」
大きな欠伸をすると、思いっきり伸びをした。
「おはよっ!」
顔を洗って走ってきたのか、チビ臣は挨拶もそこそこに席に着く。
「おう!えらいな、ちゃんと自分で着替えたんだな」
将臣がチビ臣の頭を撫でる。
(・・・俺の苦労分くらいは長く居られるといいな!)
さり気なく手で腰を擦る将臣。
「おはよう。今朝は、ご飯だ。・・・・・・将臣、腰がどうかしたのか?」
チビ臣へ挨拶を返した後、将臣が腰を擦るのを見ていて知盛が質問をする。
「!!!!知盛っ!!!!」
怒鳴る将臣、首を傾げるチビ臣、無視を決め込むチモリ。三者三様の反応だった。
「で?今日は何して遊ぶの?ね〜〜、ママぁ〜!」
朝食後、ソファーでぐったりと休んでいる将臣の上に飛び乗るチビ臣。
「・・・・・・チビ臣。頼むから少し・・・・・・」
知盛がチビ臣を抱き上げて、将臣の上から床へと降ろす。
「すまないな、チビ。ママは、動けないらしい。今日は、そうだな・・・・・・野原へ散歩に行くか。そろそろ紅葉も始まっているだろう」
「わい!ピクニック〜?」
チビ臣が飛び跳ねる。
「・・・クッ、いいや。お昼はな、ママがピザをご所望らしい。・・・冷めたら美味く無いぞ?」
「はいっ!じゃ、遊んだら家へ帰って、また遊ぼうね!」
そのまま外へ駆け出すチビ臣。チモリが面倒そうにその後を追う。
「ママはここで休んでろ」
将臣の額へキスする。
「・・・・・・行く。俺だけ仲間外れにするなよ」
「・・・クッ、それじゃ・・・手でも繋いで行くか」
知盛が手を差し伸べると、将臣が手を重ねた。
「行こうぜ!」
知盛の手を利用して起き上がると、将臣が知盛を引っ張る。
「・・・クッ、クッ、クッ」
「嫌な笑いだなぁ〜」
将臣が振り返る。
「いや?まだまだ元気そうだと思ってな・・・・・・」
「・・・勝手に言ってろ。行くぞ!」
誰の考えが正しいのか、すべて間違いなのか?
ただいま検証中───
(Printing day:2006.01.08)
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