[ チモリネコ? 第20話 ]





 何もない野原で、走り回るだけの遊びで満足するのは子供の特権だろう。
 ようやく飽きたのか、知盛と将臣が並んで座っている場所へチビ臣とチモリが戻ってきた。
 チモリはチビ臣にだけは付き合いがいい。無駄に体力を消費するだけの遊びであろうと、チビ臣に付き合う。

「よ!ど〜した。飽きたのか?」
 将臣の膝に転がったチビ臣の頭を撫でる。
「ピザ!」
「あはは!わっかりやすいな〜、オマエは。・・・だってさ、パパ」
 隣を見れば、知盛の隣にチモリが座っている。全員の視線が知盛に注がれた。

「・・・クッ、ご用意させていただきますよ」
 腰を上げると、先に歩き出す知盛。

「わい!ピザ!」
 チビ臣が将臣の膝を叩く。
「ピザ!食いたかったんだよな〜〜〜」
 チビ臣を抱えながら立ち上がる将臣。片手をチモリへ伸ばすと、しっかりチモリに握り返される。
「少しだけゆっくり帰ろうな!その方が待ち時間が少ないだろ?」
「うん!ママ、頭イイ〜」
 チビ臣に褒められるのも微妙だが、不快ではない。
「だろ?夜はまた月見しような」
「・・・月見?」
 月見ならば先月に済んでいる。チモリが将臣を見上げた。
「おう!十三夜なるものがあるらしいぜ?夜は月見うどんでデザートが芋羊羹!」
「お月様!わ〜〜〜。また夜に遊んでいいの?」
 チビ臣にとって、夜更しは大人の様で嬉しいらしい。
「ああ。その前に!昼メシ、昼メシ〜!」
 既に姿が見えなくなっている知盛の後を追った。





 顔中をピザソースにしながら食べるチビ臣。ピザが顔と同じくらい大きいのに、全部食べると言って聞かなかったのだ。
 食べ切っているのだから問題はないといえばないのだが、顔が大惨事である。
「あ〜、あ〜。顔をそんなにして食うなよ〜〜〜」
 ティッシュを数枚手に取り、チビ臣の顔を拭う将臣。
「・・・お前もだ」
 知盛に左の頬を指差された。
「おっ?着いてたか?」
 自分の顔も拭うと、最後に唇を軽く舐める。

(・・・クッ。そういうのが誘っているっていうんじゃないのか?)
 
 少しばかり艶を帯びた視線を送ると、チモリが知盛の腕を抓る。

「・・・なんだよ」
「・・・・・・まだ昼間」
 端的に言われてしまうと、言い訳も出来ない。
「・・・クッ。子作りの結果がお前達だ」
 軽くチモリの頭に手を置くと、チモリが口の端を上げて笑う。
「・・・パパに都合がイイ・・・ね」
「同感」
 知盛が立ち上がると、チモリも立ち上がる。自然と後片付けはこの二人に決まってしまった。
 将臣とチビ臣は、食べるだけ食べると、さっさと遊びだしていた。





「今日は〜?コレ何?」
「ん〜?何だが知らんが、綺麗なのを選べとさ」
 昼間拾った落ち葉を選別するチビ臣と将臣。
 知盛とチモリは和紙を作成する繊維と木枠の準備をしていた。

「ほら・・・チビども。紙でも作れ。間に落ち葉を入れれば綺麗だ」
 小さな枠をチビ臣とチモリに手渡す知盛。
「・・・俺のは?」
 知盛が瞬きをする。
「・・・オマエもしたいのか?」
「そりゃ、したいだろう?面白そうだしな!」
 
 大きく息を一度吐き出すと、将臣の分の木枠を作り始めた。
「・・・ほら。後はひたすらその枠の中で液体回してろ」
「さんきゅっ!・・・糊みてぇ〜〜〜」
 早速チビたちに混ざって紙を作り始める将臣。
 三人の様子を一度眺めると、しばらくは遊ばせておけると確信した知盛は昼寝を始めた。



「知盛〜〜〜、紙っぽくなったぞ?次は〜〜〜」
 手が離せない将臣が知盛を呼ぶと、知盛が少しだけ動く。
「・・・・・・そっちに置いて放っておけ、乾かせ」
 片目だけを開けて作り方の続きを言うと、再び目を閉じて眠る知盛。

「おう!じゃ、チビたちも俺の真似しろよ〜」
 木枠を外して、用意してあった布の上に漉いた紙を置く将臣。
 まだぐにゃぐにゃで、和紙になるのか心許無いが、透けている落ち葉は綺麗な気がする。
 チモリも器用に紙を置いた。

「うっ・・・出ない〜〜〜!」
 チビ臣には難しかったのか、枠が上手く外れない。
 将臣が手を貸してやると、三人分の紙が並んだ。

「わ〜〜。いつ乾くの?ママ」
 将臣も初めてなので、知っているわけではない。
「ん〜、いつだろうな〜。知盛が後は何とかしてくれそう・・・だよな!」
 面倒そうに体を起こす知盛。
「・・・・・・しばらく触るな。紙にならないぞ。違う遊びでもしてるんだな」
 知盛にも乾燥させる事は出来ない。待つしかないのだ。

「へ〜。違う遊び・・・の前に!駄菓子があるぞ〜〜〜」
 一番食べたいのは将臣だとしか思えないが、チビ臣が釣れた。
「わ〜!わ〜!食べるっ!」
 立ち上がった将臣に、ジャンプしながら纏わりつく。
 将臣から食べ物が出てくるのではないが、餌付け完了といった状態だ。いつでも菓子類で釣れることだろう。
「よし!チモリも来い。お菓子食うぞ〜〜〜」
 三人はおやつの時間となった。



 少しだけ体を起こして知盛が三人の様子を眺める。

(今夜の結果次第・・・か・・・・・・)

 すべてに確証はないのだ。将臣の説だとするならば、あまりに単純すぎる。
 知盛の説にしても件のローションを使うという条件を外せば、ほぼ毎日のように営んでいる行為である。
 両方を揃えただけで、そう簡単に事が運ぶものだろうか?
 ここまで考えて、ひとつの結論を導き出す。

(逆か・・・ならば・・・・・・)
 将臣と知盛の意志力とローションという媒体の効果となる。

(今夜はチビつき決定だな・・・・・・)
 チビがいるからといって、お預けされるつもりはない。と、すれば、知盛がとる行動はひとつ。

(コドモにはさっさと寝てもらうに限るな)
 口元に笑みを浮かべながら、この後はチビたちを遊び疲れさせるための知恵を絞った。





「ご飯!お腹空いたっ」
 散々知盛にかわかわれ、遊び疲れて転寝をしていたチビ臣は、目覚めと同時に空腹を訴える。
 これには知盛も目を丸くした。

「・・・・・・寝てただけだろ?」
 おやつを食べて、追いかけっこをして帰宅後、すぐに寝てしまったのだ。

「うん!お腹空いたっ!」
 耳をパタパタと動かし、ご飯への期待ぶりをアピールする。
 知盛は紙を乾かす作業をチモリに任せる事にした。
「・・・最後に綺麗な紙の間に挟んどけ」
「うん」

 チモリが何かしているのに気づくと、チビ臣が近づく。
「何してるの?」
「さっきの紙。こうすれば早くできるだろ」
 他の紙に挟む作業を繰りかえし、水分を抜くのだ。ある程度乾けばこの行程はかなり有効である。
「俺もするっ」
 チビ臣も紙で挟んでは叩くという作業を真似して楽しんだ。





 夕飯は月見うどんである。あまりにも早く済んでしまった夕飯の後は、室内で窓からやや欠け始めた月を肴に月見の宴。
 ただし、酒は将臣と知盛のみ。チビ臣とチモリには芋羊羹が与えられている。
「・・・この前さ・・・いつ消えた?」
 小声で隣にいる知盛へ問いかける将臣。
「・・・外だったからな・・・・・・」
 0時くらいだったろうとは思う。月の傾き具合で予測はつくが、断定は出来ない。
「そっか・・・あいつら・・・どうして分離するんだろうな・・・・・・」

(まだ・・・信じているのか?分離ではなく・・・・・・)
 知盛は別の解答を自分なりに導き出している。ただ。それを将臣に告げるつもりは現段階ではない。

「・・・クッ。お馬鹿さんだな、将臣は。俺の愛の結晶だ」
 素早く唇を奪う。
「なっ!ばっ・・・・・・」
 知盛を叱ろうとすると、知盛の指が窓際を指す。チビ臣とチモリがしっかりとこちらを向いていた。

「・・・夫婦は仲良くないとなぁ?教育に悪い・・・・・・」
 将臣の振り上げて止まっている腕を、やんわりと下ろさせる。


「・・・見せる方が教育に悪いだろうがっ!ボケッ!!!」
 現状を理解した将臣が知盛の膝を抓った。


「あ・・・ママがパパをイジメてる・・・・・・」
 残念ながら、チビ臣は将臣の味方にはならないらしい。
「なっ、これは・・・。そう!スキンシップだ!愛情表現なんだ」
 うっかり余所見をした将臣に隙が出来る。知盛が将臣を抱き寄せ、頬と頬を寄せた。
「・・・パパはな、ママの屈折した愛情も気に入ってるんだ。チビ臣はイイコだな。心配しなくてもいい」
 知盛が将臣の頬を舐めた。
「!!!」


「な〜んだ!よかったね、チモ。パパとぉ、ママはぁ、仲良しじゃないとダメなんだよね。テレビで観たもん」
 芋羊羹を大きく口を開けて頬張るチビ臣。
「・・・意味が違う」
 チモリの呟きは、食べるのに忙しいチビ臣には聞こえなかった。





 数日遅れのお月見の晩、チビ臣とチモリの姿は消えるのか?消えないのか?───








(Printing day:2006.02.24)

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