[ チモリネコ? 第21話 ]
遊び疲れて満腹になれば、残るは眠るのみ。
いつの間にかソファーで眠っているチビ臣。その隣でチモリも珍しく眠り込んでいる。
「なぁ・・・そろそろ・・・・・・」
時計を見上げる将臣。チビたちの運命が気になって仕方が無い。
「・・・そう・・・だな・・・・・・」
様々な思いが交錯する中、静かに時計の針が重なる。
カチッ───
無機質な機械音が静寂の中でやけに大きく響いた。
「やっ・・・た・・・消えてない・・・・・・」
「ああ」
将臣にしては上出来なことに、チビたちを起こさないよう声を落としていた。
知盛は自分の考えが正しかったのだと確信する。
(カプチーノのあれがどうこうじゃない・・・俺たちの方が夢なんだ・・・・・・)
ねじれた異空間に彷徨い重なり合っている将臣と知盛の夢の時間がココなのだと思い知らされる。
(・・・・・・そうそう願いが叶う訳がないだろう?)
嬉しそうにチビたちの頭を撫でている将臣には告げにくい真実。
何でも思ったとおりになる事が既におかしいのだ。
(現世ならば・・・どこで接点かあったんだろうな・・・・・・)
会ったことが無いはずの将臣が、どこか懐かしく気になったのだ。
ココでの記憶は、将臣と出会ってからのものしかない。しかし───
「・・・将臣。お前、団子だけで俺を見つけたのか?」
聞くまでもなく団子と答えられそうではあるが、再度尋ねておきたい。
将臣が振り返った。
「あ〜っと・・・・・・よくわかんねぇ。気づいたらあの森にいたし。でも、腹は減ってた」
「そう・・・か。先にガキ共を寝かせるぞ。話がある」
さっさとチモリを肩に担ぎ、チビ臣は丁寧に抱き上げる知盛。
「その扱い、ひどくねぇ?俺も運ぶって」
知盛の肩からチモリを腕に貰い受ける将臣。
「へぇ?チビには親切なことで。俺にもサービスして欲しいもんだな」
「ばっ、バカヤロウ!どうして話がそうなるんだ?」
軽く知盛の足に蹴りを入れると、前を歩く将臣。
それぞれがチビをベッドへ寝かせると、元いたソファーのある部屋へと戻った。
「将臣。今日はチビたちは消えなかった。お前が強く望んだんだろう?」
将臣を抱える姿勢でソファーに座る知盛。
「俺?そりゃあ・・・あいつらいると楽しいし・・・・・・」
確かに望んだのだ。知盛の質問に対する答えはひとつしかない。
「まぁ・・・・・・もう少しよく考えるんだな。何でも都合よく事が運んでいる事実を」
「都合よく?」
将臣が振り返れば、知盛が軽く眉を上げた。
「ああ。この家も、最初よりでかくなっている。行きたい場所は、いつの間にか現れる。おかしいだろ?」
知盛だけの時は、本当に小さな家だったのだ。
確かに将臣と暮らすために拡張した覚えはあるが、ここまでした記憶は無い。
けれど、いつの間にか自然に使っているのだ。
「それって、どういう・・・・・・」
将臣が眉間に皺を寄せた。
「なあに、そう難しいことじゃない。ココは少なくとも将臣の願いが叶いやすい場というわけだ」
「はぁ?」
まるで意味不明な知盛の話に、いよいよ将臣が声を上げた。
ねじれた空間で出会った二人───
突然そんな事を言われても、ココでの記憶もあるし、触れれば感触とてあるのだ。
「夢・・・にしちゃ、リアルすぎねぇ?」
自分の手のひらを閉じたり、開いたり、動かしてみせる将臣。
「そう・・・だな。寝ている時に見る夢とは、少しはがり違うだろうが・・・・・・夢は夢だな」
状況としては、将臣の意識に知盛が割り込んでいると考える方が近いだろう。
「じゃあさ。俺が起きたい〜、目覚めたい〜って思えば終わるのか?」
ソファーで知盛の膝へと転がり、知盛を見上げる。
「そうじゃない。それだと、始まりも将臣が決められる事になる。つまり、外的要因と内的要因の複合だ」
将臣の鼻を摘まむと、視線を窓の外へ移す知盛。
(どうして猫耳族などと・・・・・・)
チビになったり、大きくなったり自由自在なのがそもそもおかしい。
チビの時は耳付きな姿で、大きくなるとほぼ人型というのも変だ。
普通だと思っている時点で普通ではない。
すべてが何者かの意思によって動かされているとしか思えない。
(己の素性を知らなかったと・・・そういう事だ)
記憶の書き換えが知らない間に行われている。
「・・・っかんねぇ。俺の夢だとしたら・・・外的要因はなんなんだよ?」
「初めて会った時、お互いを動物に近いものと認識していただろう?今は・・・・・・」
将臣の目が見開かれる。
大きな姿の時は、人間になっている。
「だからって、知盛の夢じゃなくて俺なのか?」
どちらの夢でも、あるいは両方でもと思う。
「そうだ・・・・・・ここは将臣の夢だ。俺はチビなど望んじゃいないし、誰とも出会わずとも生きていた」
将臣に出会うまでは、勝手気ままにその日暮らしをしていたのだ。
適当に食事をし、適当にオンナを喰って、それこそ毎日楽しくだ。
(・・・変わらぬ日々に疑問すら持たなかった・・・よくも、まあ・・・・・・クッ・・・・・・)
恐らく、団子がきっかけだったのだ。
将臣の大好物の団子を持っていたがために、団子ごと夢に引き寄せられた知盛。
「・・・クッ、クッ、クッ・・・団子か・・・原因は」
「はぁ?・・・つか、ちょっと待て!」
のそりと将臣が起き上がった。
「お前さ、そういう事考えていたなら先に言えよ。・・・昨夜のって・・・・・・」
将臣と知盛が一晩中睦み合う必要性は無かったとなる。
「さあ?・・・気持ち良かったならイイだろ?」
「知盛っ!!!」
片手を振り上げる将臣。が、知盛にまんまと手首を掴まれ、殴ることは叶わなかった。
「・・・じゃあさ、昨日と今朝のは何なんだよ。別にしなくてもチビたちはチビで残れたんだろ?」
諦めて、真面目に考えようと将臣が大人しく座る。
「チビで残る・・・には条件がいるんだ。それだけ強い思い込みが出来る要因が・・・な」
「あ〜〜〜あ。じゃ、何か?俺の気分次第?」
将臣が両手を上げて天井を見上げた。
「それが一番の条件だが・・・・・・チビ臣がどれだけ理解して存在したいと思っているか・・・もだな」
将臣の分離体なのだ。両者の思いが合致していないとならない。
「げ!・・・あいつなぁ・・・食べたいものがあるうちはこっちに居たいんじゃねぇのか?」
自分で自分を分析するのも何ではあるが、間違いない。
「・・・かもな。しばらくは・・・四人で暮らすのも悪くない・・・か・・・・・・」
知盛が先に了承した。
「やった、ラッキー!んじゃ、ま。そういう事で。・・・言っとくが、今夜は頑張らない。しないからな!!!」
素早く知盛から離れる将臣。
ソファーで隣に座っているなど、危険この上ない。
「冷たいママだな・・・・・・子供たちが心配するぜ?パパとママは・・・・・・」
緩慢な動きに見えるが、知盛の動きは早いのだ。
次に将臣が目を開いた時は、床で組み敷かれていた。
「・・・床かよ!っか、もう無理。今日は無理。かなり無理っ!」
腕を動かすが、知盛はビクともせずに将臣を押さえている。
「そう言うな・・・子供が出来た記念日だ。楽しくやろうぜ?」
軽く首を傾げて微笑んで見せると、さっさと将臣の首筋へと顔を埋める知盛。
「・・・あ〜・・・なんか間違ってるよな・・・この家・・・・・・ま、いいか」
これからは四人の生活が始まるのだ。
二人と二匹でもいい。
「これからもヨロシクな。お父さん!」
将臣から知盛へキスをすれば、知盛が将臣を押さえていた腕を離す。
「ママの背中が痛いだろうから・・・部屋へ行くか・・・・・・」
将臣を抱えて寝室へと運ぶ知盛。
新しい家族の始まりの日───
(Printing day:2006.09.03)
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